第87章 古い家

江庭マンションには、もう住めない。あそこは西野グループの物件だし、退職届も出した。これ以上、居座る理由がない。

星奈は次の住まいを見つけていた。

西城の旧市街に、父が残した古い家がある。2DKで広くはないが、名義は彼女のものだ。借金の清算で差し押さえられたときも、狭くて立地も不便だと取り立て屋に見向きもされず、誰も欲しがらなかった。そのおかげで、逆に手元に残った。

ただ、何年も空き家だった。片づけが必要だ。

星奈は清掃会社に頼んで徹底的にクリーニングを入れ、最低限の家具も買い足した。三日かけてようやく、どうにか人が住める形になる。

引っ越しは水曜日。

高田さんが荷造りを手伝い、優...

ログインして続きを読む