第95章 一度死ぬわけではない

西野直人は、積み上げた証拠資料の束を金庫に押し込み、鍵を回した。

キーリングを握る指に力が入り、関節が白くなる。

書斎の入口に立つ千葉大翔は、声を出せずにいた。西野直人に長く付き従ってきたが、社長がこんなふうに止まっているのを見たのは初めてだ。怒鳴りもしない。冷たい顔で切り捨てもしない。ただ椅子に座ったまま、机の上の一本の傷に視線を刺し、十分近くも動かなかった。

「西野社長」千葉大翔が探るように言う。「山川心菜の件ですが……」

「いったん置け」西野直人の声は、ひどくしゃがれていた。

「置く、ですか?」

「命だけは残す」ようやく顔を上げた目は血走っている。「一度死んで終わりじゃない...

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