チャプター 32

イライジャ・ヴォーン。

それは決定的なことだった。

「酷く腹の立つことがあるんだよ、子ウサギ」

喉が渇いた。

張り詰めた空気は、息が詰まるほどだった。

「な、なに?」

彼の顔にゆっくりと笑みが広がったが、そこには何か暗いものが混じっていた。

「お前のあのクソ兄貴のことだ」彼は声を低くして言った。「あの男を臆病者と呼ぶだけじゃ生ぬるい。軽蔑どころか、それ以上の報いを受けて当然だ」

背筋に冷たいものが走った。

「む、報い?」

反応する間もなく、彼の手指が俺の顎を捉え、顔を上向かせた。

彼の視線は、俺の表情の一つひとつを読み取ろうとするかのように、じっくりと観察していた。

「...

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