チャプター 45

「虐待してきた相手に何かを感じるなんて、気が狂ってるのかもしれない。でも、彼は僕を殴らなかった。初めての時も、決して暴力を振るわなかったんだ。彼がしたことを正当化するつもりはないけど……誰も信じてくれなかった時、彼だけが僕を信じてくれた」

僕の声は微かに震えていた。

「軽蔑なんてしないよ。俺だって、自分を虐げた男に惚れてるんだから」

その言葉に衝撃を受け、僕は驚いて彼を見つめた。

「ここに来た当初、俺の人生は生き地獄だった」

彼の声のトーンが落ち、目に見えない重苦しい何かがその響きに宿った。

「絶え間ない恐怖。最悪の事態を待ち受けるだけの毎秒。トニー……あの『死神(リーパー)』の右...

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