チャプター 58

イライジャ・ヴォーン。

その名前を考える代わりに、私は彼の胸に頭をもたせかけ、彼から放たれる温もりに身を沈めた。

「わかっているよ。だが、無理をする必要はない。まだ体も痛むだろうし、避けられる苦痛なら避けるべきだ。食堂に着いたら、少し歩かせてやるから」

私が無理をしないよう常に気遣うその様子に、自然と小さな笑みがこぼれた。

彼は独占欲が強く、支配的で、執着心が強い。

それでも、彼に抱きしめられ――その力強さに包み込まれていると、不思議な安らぎを感じた。

廊下を運ばれていく間、私の心は、ようやく独房を出て他の誰かと関われるという思いに彷徨った。

今日は数日ぶりに、食堂で食事ができる...

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