チャプター 72

ダンテ・カステリ

頬に触れる最初の優しい感触が、俺を意識のふちへと引き戻した。繊細なキス、そしてまたひとつ。目を開けるよりも先に、俺の唇から柔らかな吐息が漏れた。

視界がはっきりすると、俺の上に跨るイライジャの姿があった。腫れた唇に、悪戯っぽい笑みを浮かべている。

「おはよう、愛しい人」

朝一番に聞くあいつの声は、誘惑そのものだった。

甘く、中毒性のある罪。

微笑まずにはいられなかった。

あいつはいつも、なんの苦労もなく俺をそうさせる。

俺は親指を彼の頬に滑らせ、その温かく柔らかな肌をなぞった。

「おはよう、愛しい人。よく眠れたか?」

彼の笑みが深まり、俺の顎にキスを落とす...

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