第116章

坂田和也は呆然と立ち尽くした。

彼女の頬を伝う涙を拭おうと手を伸ばしたが、すげなく避けられてしまう。

小林絵里は乱暴に自分の顔を拭った。

「触らないで」

坂田和也の喉仏が上下に動く。彼は絵里をじっと見つめた。

「絵里、お前……」

何かを言おうとしたようだが、言葉は喉の奥でつかえ、ただ射抜くような視線を向けることしかできない。

胸の奥がギュッと締め付けられるような鈍い痛みを覚える。その瞳に浮かぶやり場のない悲しみと無念さを目の当たりにして、彼は戸惑い、わずかに狼狽した。

小林絵里はヒクッと鼻をすすった。

「坂田和也、私たち、もう離婚しましょう? あなたの周りには優秀な人がたく...

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