第118章

「絵里」

 小林絵里はさらに強く身をよじった。

「坂田和也、離してよ!」

 あの時彼女が言った言葉は、すべて聞き流されてしまったのだろうか。

 この一ヶ月、何事もなく平穏に終わらせてはくれないのか。

 なぜまた、彼女を探しに来るのか。

 まるで、彼の心にまだ彼女が存在しているかのように錯覚してしまうではないか。

 小林絵里は考えれば考えるほど腹が立ち、さらに激しく抵抗した。しかし、坂田和也はよりいっそう強く抱きすくめてくる。その灼熱の吐息が、彼女の肌に焼き付いた。

 突然、小林絵里は口を開いて彼の肩に噛みついた。親の仇でも討つかのように思い切り歯を立てると、同時にポロポロと涙...

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