第120章

彼女の訴えなど、まるで聞こえていないかのようだった。

絵里はそっと瞳を閉じ、いっそ抵抗するのをやめた。

――そう……彼女はとっくに足掻くのを諦めているのだ。

どうせ、逃げられやしない。

抗いがたい睡魔に襲われ、絵里はそのまま意識を手放そうとした。

坂田和也の唇はすでに彼女の耳元へと這い寄っている。固く閉じられたそのまぶたを見つめる彼の瞳の奥に、ふと、深く複雑な色がよぎった。

彼から零れ落ちる水滴はとうに乾き、今は全身が汗に濡れている。何度も口づけられ、赤く腫れた彼女の唇を見つめると、彼は不意にその細い顎を指で挟み込み、再び深く唇を塞いだ。

やっと眠りにつけそうだったのに、またし...

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