第130章

車を降りた小林絵里は、ひどく酔いからくる不調に苛まれていた。顔を上げた途端、視界がぐらりと揺れ、思わずよろめいてしまう。

 その様子に気づいた高川寒彦が、すかさず彼女の腕を支えた。

「大丈夫ですか?」

 体勢を立て直した絵里は、高川との距離が思いのほか近すぎることにハッとした。

 慌てて自分の腕を抜き取り、作り笑いを浮かべる。

「平気です。ちょっと眩暈がしただけで」

 高川の眉間に皺が寄った。

「その様子じゃ、一人で部屋まで帰れないでしょう。送りますよ」

「いいえ、大丈夫……」

 絵里が首を横に振り、さらに言葉を続けようとした矢先、少し離れた場所から聞き慣れた声が響いた...

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