第144章

病院を出てすぐ、坂田和也は小林絵里に電話をかけた。だが、コール音はすぐに無情なツーツーという音に変わった。

和也の眉間に深いシワが刻まれる。

二人の関係は、苦労の末にようやくいい雰囲気になりかけていたというのに。夏目夕子の身に突然起きたアクシデントが、その空気をいとも簡単にぶち壊してしまったのだ。

これほどの苛立ちを覚えたことは、今までになかった。胸の奥に澱のように溜まった鬱憤をどうにか吐き出そうと、乱暴にネクタイを引き緩める。

だが、それも徒労に終わった。

車に乗り込むと、煙草を取り出して火を点ける。淡い紫煙が目の前を覆う中、和也は目を細め、じっと前方を睨みつけていた。

そ...

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