第159章

「必要ない」

 坂田和也は目を閉じたまま、弱々しい声で吐き捨てた。「あいつの顔など見たくもない。だが、腐っても俺の妻だ。万が一逮捕でもされれば、坂田家の名に傷がつく」

 坂田正義は冷たく鼻を鳴らした。「お前を殺そうとした女だぞ。まだ庇おうというのか」

 高橋雲が傍らで口を挟んだ。「和也、何か誤解があるんじゃないの? 絵里さんがそんなことをする人だとは思えないわ」

 しかし坂田和也はそれ以上何も語ろうとはしなかったが、その強硬な態度は誰の目にも明らかだった。

 小林絵里は両手を固く握りしめ、坂田和也の顔を射抜くように見つめていた。深く息を吸い込み、震える唇を開く。「私は、あなたに...

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