第160章

小林絵里の頬を伝う涙は、とめどなく溢れ出ていた。まるで今になってようやく気づいたかのように、彼女はそっと手を伸ばして涙を拭い、そのまま拳を固く握りしめた。

「泣くことなんて、ないのに」

押し殺したような声で、彼女は呟いた。

だが、強がれば強がるほど、涙の堰は切られたように激しく溢れ出た。

松本桜は慌てて彼女を力強く抱きしめた。

「絵里、泣かないで。あんなクソ野郎のために涙を流す価値なんてないわ」

小林絵里はすがりつくように松本桜の腕を強く掴んだ。指の関節が真っ白になるほどの強い力だった。

「あの人、わたしを信じてくれなかった……どうして? どうして信じてくれないの? わたし...

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