第163章

その言葉を聞いて、小林絵里はハッとして表情を強張らせた。そういえばそんなこともあったと思い出し、静かに首を横に振る。

「今のところ、売るつもりはありません」

高川寒彦は短く相槌を打ち、何か言いたげな鋭い視線で彼女をじっと見つめた。

小林絵里は口を開く。

「それでは、お先に失礼します。さようなら」

高川寒彦が答える。

「ああ」

彼は踵を返し、先ほどの男たちのほうへ歩いていった。

小林絵里は胸の奥に溜まっていた濁った息を長く吐き出すと、別の方向へと歩き出した。

今の彼女にとって唯一の頼みの綱は検査結果だけだった。その結果が出ない限り、自身にかけられた嫌疑が晴れることはない。

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