第167章

小林絵里は一瞬動きを止めたが、すぐに視線を前に向けたまま、真っ直ぐに通り過ぎようとした。

松本幸雄は一つ深呼吸をして、彼女に歩み寄った。

「小林さん」

小林絵里は足を止めた。

「何か用?」

松本幸雄は書類を取り出し、営業用の作り笑いを浮かべた。

「やはりサインをしていただけませんか。その方が、あなたにとっても坂田社長にとっても良いはずですから」

小林絵里の顔がスッと沈み、松本幸雄の手にある書類を睨みつけた。

「どういう意味?わたしがサインしない限り、毎日これを送ってくるつもり?会社でも色々といやがらせをして?」

松本幸雄は答えた。

「そういうことになりますが、わたしは決し...

ログインして続きを読む