第175章

坂田和也は病室の入り口に立ち、陰鬱な顔で彼女を見つめていた。その深く細い瞳はまるで寒淵のように、微塵の温度も感じさせない。

小林絵里は、周囲の空気が数度下がったかのように錯覚した。足元から這い上がるような寒気を感じ、得体の知れない重圧が全身にのしかかってくる。

小林絵里の表情も冷たく凍りついた。

「わたしを呼び出して、一体何の用ですか」

まさか、夏目夕子の言っていたことだろうか。

わけのわからない濡れ衣を、またわたしに着せるつもり?

そう思うと、小林絵里の潤んだ瞳にも澄み切った冷たい光が宿った。

坂田和也は低い声で詰問した。

「なぜ夕子を誘拐した?」

「ふっ……!」

小林...

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