第196章

坂田和也の眉が不快げに寄せられた。目を閉じた彼女の顔が吐息のかかる距離にあったが、なぜか急に苛立ちが込み上げてきた。

その時、彼のスマホの着信音が鳴り響いた。彼はすぐさま身を起こし、電話に出た。

「ああ、分かった」

相手と二、三言だけ言葉を交わして電話を切ると、夏目夕子に視線を向けた。

「ゆっくり休め。俺は用事があるから、先に行く」

そう言い残し、背を向けてそのまま病室を後にした。

「和也……」

ためらいなく立ち去る彼の背中を見て、夏目夕子の顔色が変わった。無意識にベッドから降りて追いかけようとしたが、彼の足は速く、すでに病室のドアは無情に閉ざされていた。

彼女は両手でシーツ...

ログインして続きを読む