第207章

夏目夕子の顔に、ぱっと笑みが浮かんだ。

「ありがとうございます。閉じ込めたりしないでいただければ、それでいいんです。帰ったら、わたしがきちんと話しますから」

「……ああ」

坂田和也が淡々と相槌を打った、そのとき。

バタン、と車のドアが閉まる音がした。

「ダメ!」

小林絵里が大股で歩み寄ってくる。澄んだ水色の瞳に感情を滲ませ、坂田和也を真っすぐ見据えた。

「佐川麗々を放しちゃいけない」

坂田和也が眉をひそめる。

「俺に命令する気か?」

小林絵里の指先が反射的にきゅっと縮む。胸の奥がずきりと痛んだ。冷ややかで鋭いその顔が、もう別人みたいに遠い。

そこへ夏目夕子が口を挟んだ。...

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