第208章

「行かない!」

 小林絵里はそう言い捨てると、松本幸雄を一瞥することさえなく、そのままエレベーターへ乗り込んだ。

 松本幸雄はこめかみがずきりと痛むのを感じた。

 昨夜は、あんなに普通だったじゃないか。

 たった一晩で、どうしてまたここまで拗れたんだ……?

 彼も後を追ってエレベーターに入り、なんとか取り繕おうとする。

「小林嬢、もし何か誤解があるのなら、やはり坂田社長と直接お話しになったほうが……その……」

 小林絵里が冷ややかに視線を向けた。

「出て」

 松本幸雄「……」

 話し合い拒否はまずいだろ……!

 だが、その氷みたいな目に、松本幸雄は形のない圧を覚えた。ふ...

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