第209章

  彼にまつわる、この人生の痕跡を――全部、消してしまう。

  電話の向こうで、高川寒彦がくすりと笑ってから言った。

「いいよ。待ってろ。すぐ行く」

「うん」

  通話を切るなり、小林絵里はアプリを開き、自分の家を掲載した。

  それから十五分ほど。

  ピンポーン、とチャイムが鳴る。

  絵里がドアを開けると、紫がかったアッシュの短髪に、いかにも悪そうな笑みを浮かべた高川寒彦が立っていた。片手でドア枠に身体を預け、彼女を見るなり言う。

「急にどうした。やっと吹っ切れた?」

「家が広すぎて……わたし一人だと怖いんです」

  寒彦が眉を上げる。

「その理由、ね……」

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