第224章

あいつが勝手に発狂するなら、こっちは付き合わない。

小林絵里はさっとタクシーに乗り込み、ホテルへ向かった。

翡翠居。

薄暗い照明の下、男のすらりと長身の影がその場に立ち尽くしていた。頬をわずかにそむけたまま――全身に、刺すような冷えた気配をまとって。

彼は指先で自分の頬に触れ、ふっと低く笑った。今までとは違う小林絵里が、そこにいた気がしたのだ。

――面白い。もっと興味が湧いてきた。

そのとき、携帯の着信音が鳴る。彼は通話を取った。

「……もしもし」

受話口から、夏目夕子の柔らかな声が届く。

「和也、出張なのに、どうして言ってくれなかったの?」

坂田和也は冷えた声で返した。...

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