第227章

周囲には身を隠せるようなものが何もない。小林絵里は、ただ前へ進むしかなかった。

ところが次の瞬間、横を一台の車がすっと追い抜いていき――跳ね上げた泥水が、容赦なく絵里の全身に降りかかった。

小林絵里「……」

今日はどうして、こんなにツイてないの。

その場に立ち尽くしたまま、激しい雨に打たれる。しばらくしてようやく目を開け、濁った息をふっと吐き出して、また歩き出した。

――なのに。

前を走っていた車が、止まった。

追いついた絵里の目の前で後部座席の窓がすっと下がり、坂田和也の端正で鋭い横顔が現れる。

「乗れ」

小林絵里は手をぎゅっと握りしめた。「坂田和也、子どもみたいなことし...

ログインして続きを読む