第229章

「はいはい、わかりました。すぐ下に指示しておきます」

 支配人は何度も頷いた。

 小林絵里はその言葉を聞くと、そっと目を伏せる。

 また来いって?

 冗談じゃない。二度と来るもんか。

 支配人の態度は、さっきまでとは別人みたいだった。顔には媚びるような笑みと、過剰なほどの恭しさ。わざわざエレベーターのボタンを押し、小林絵里を坂田和也のいる階まで案内する。

 坂田和也が滞在しているのは、翡翠居で唯一のプレジデンシャルスイート。

 エレベーターの扉が開くと、斜め向かいにその客室のドアがあった。

 支配人は恭しくカードキーを差し出す。

「小林お嬢様。こちらのカードで、いつでも自由...

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