第232章

斉藤子玄は彼女を見て、少し驚いたように言った。

「絵里、昨夜ここに泊まったのか?」

安町は大きくもなく、裕福とも言えない。だが、翡翠居は誰でも住めるような場所じゃない。

その翡翠居に、小林絵里がいる。

小林絵里は不思議そうに彼を見返す。

「何か用?」

「こっちで採用面接を受けに来たんだ。まさか君に会うとは思わなかった」斉藤子玄は続けて、探るように尋ねる。「どこへ行く? 孤児院、また行くのか?」

「行かないわ」

斉藤子玄は目を瞬かせた。

「じゃあ、実の両親のこと……聞かなくていいのか?」

小林絵里の表情は冷えたままだ。

「もういい」

立田芳子は、そもそも何も知らないのか...

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