第236章

斉藤子玄は受け入れきれず、坂田和也の腕の中にいる小林絵里を見て、裏切られた気がした。

結婚しているなら、どうして俺に言わなかった。

そのせいで、無駄に気持ちを注いで――。

彼は踵を返し、その場を去る。

坂田和也は斉藤子玄の表情の変化を一部始終見届けていた。瞳に薄い嘲りがよぎり、視線を小林絵里の顔へ戻す。

酒が回ったのだろう。白い頬は朱に染まり、澄んだ杏色の瞳はうるんで、きらきらと揺れている。無垢で、なのに妙に色っぽい。

「カズ……」

彼女は彼の名を囁き、ふいに両手で彼の顔を包むと、顎にちゅっと口づけた。

「今までのこと、全部夢なんだよね? あなた、坂田家の和也様でもないし、D...

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