第237章

坂田和也は散らばりかけた思考を引き戻し、腕の中の人をさらに強く抱き寄せた。柔らかな体温がじかに伝わり、瞳の色がいっそう沈む。

「坂田社長」

そのとき、副町長が近づいてきた。坂田和也が女を抱いているのを見て一瞬ぎょっとしたが、すぐに表情を整える。

「今夜はこちらにお残りになりますか。それとも翡翠居へお戻りで?」

副町長が声をひそめてたずねた。

坂田和也は短く言う。

「翡翠居だ」

ここは住環境が翡翠居に及ばない。彼にはそのあたりのこだわりがある。

副町長は慌ててうなずき、視線が思わず小林絵里へ流れた瞬間、胸の奥がひやりとした。

――この女、昨夜うちのバカ息子が手に入れたがってた...

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