第238章

坂田和也はその場にしばらく立ち尽くし、ようやく車へ戻った。

松本幸雄は空気の変化をはっきり感じ取り、びくびくしながらエンジンをかけ、翡翠居のほうへ車を走らせた。

翡翠居へ戻るなり、坂田和也が冷ややかに言う。

「今日、彼女と一緒にいた男の情報を調べろ」

松本幸雄は短く答えた。

「はい」

……

小林絵里はホテルに戻るとシャワーを浴び、それから斉藤子玄に電話をかけた。

――出ない。

絵里は小さくため息をつく。

こんなふうになるなんて、思ってもいなかった。

あのときは酔っていて、頭の中も目の中も坂田和也でいっぱいだった。思い浮かべていたのは、記憶を取り戻す前の彼。だからほかのこ...

ログインして続きを読む