第246章

小林絵里はそれ以上なにも言わず、ソファに静かに腰を下ろして、彼の手が空くのを待った。

昨夜はほとんど眠れていない。病院には横になれる場所もなく、朝早くからここへ来たせいで、意識が重たく沈むほど疲れ切っていた。

気づけば、身体をソファにもたせかけたまま――眠りに落ちていた。

坂田和也が忙しさの合間にふと視線を上げると、絵里は音もなく眠っていた。整った小さな顔には疲労の色が滲み、眉間がきゅっと寄っている。悪い夢でも見ているのか。

彼は立ち上がり、そっと近づいた。身を屈め、眉や睫毛を丁寧になぞるように眺める。鼻先、唇、白い首筋へと視線が滑り、襟元がわずかに開いた隙間から、消えきらないキスマ...

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