第250章

江口俐央は、実は小林絵里が坂田和也の妻だと知っていた。

それでも、知らないふりをする。わざと――あの女に恥をかかせるために。

従姉からはとっくに聞かされていた。小林絵りはただの一般人。坂田和也には、どう考えても釣り合わないのだと。

俐央はちらりと小林絵里を一瞥し、瞳の奥に露骨な侮蔑を走らせた。

坂田和也の表情が、すっと冷える。

「俐央。もう大人だろ。言っていいことと悪いことくらい、わきまえろ。俺と妻のことに、他人が口を出すな」

江口俐央は固まった。まさか、ここまで厳しい声で言われるとは思っていなかったのだ。途端に目尻を赤くして、悔しげに声を震わせる。

「和也お兄ちゃん……どうし...

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