第255章

江口錦はぴたりと表情を止め、深い眼で坂田和也を見据えた。「和也、この件、最後まで突き詰めるつもりか? あの時のこと……忘れたのか?」

その身からいつもの温和さが剥がれ落ち、険しさと圧がにじむ。

坂田和也の端正で鋭い顔は、感情の揺れひとつ見せない。淡々と言い放つ。「もちろん覚えてる。あの件がなけりゃ、おじさんも、その後のゴタゴタから無傷じゃいられなかったはずだ」

江口錦の目つきが、途端に沈んだ。

過去を盾に脅すなら、こちらも過去で釘を刺す――そういうことか。

いいだろう。

まったく、末恐ろしい若造だ。

江口錦は一度、呼吸を整えてから口を開いた。「和也。これは私の躾がなっていなかっ...

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