第266章

彼女は本当に酒が飲めない。

酒に弱いのも、本当に弱い。

ビールを半分もいかないくらい飲んだだけで、もう意識がふわふわしていた。

坂田和也が彼女をじっと見つめる。「俺たち、どうする?」

小林絵里はそのままテーブルに突っ伏した。「……やめる。もう、しない……」

坂田和也の表情が、一気に沈む。

頬が熱で染まったまま、彼女はすうっと眠りに落ちた。さっきまでみたいに、抱きついてくるでもない。そのことが、なぜだか少しだけ寂しい。

だが――やめる?

ありえない。

彼は手を伸ばし、頬にかかった細い髪を耳にかけてやる。深く見下ろし、低い声で囁いた。

「小林絵里。あのとき、素直に離婚に応じて...

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