第267章

松本幸雄は困ったように首を振った。

「わからないなら、もういい」

そう言い捨てて踵を返し、そのまま立ち去ろうとする。だが二歩ほど進んだところで、ふっと思い出したように戻ってきた。庄司一火をまっすぐ見据え、低い声で言う。

「小林嬢は必ず守れ。でないと——お前の命が危ない」

庄司一火がぽかんとした顔のまま固まっているうちに、松本幸雄は今度こそ背を向けて去っていった。

庄司一火はその場に立ち尽くし、しばらくしてようやく我に返る。

坂田社長が、小林嬢を守れと言った。

なら、命を懸けて守るだけだ。

今回の件で思い知らされた。自分はただの部下。自分の命は坂田和也にもらったようなものだ。な...

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