第270章

小林絵里は淡々とした顔で言った。「別に、あなたのやったことは間違ってないでしょ。なんでわたしが文句言うの?」

その言葉を聞いた瞬間、坂田和也の沈んで張り詰めていた気分が、ふっといくらか晴れた。

以前の彼女なら、きっと鼻で笑っていたはずだ。

――まさか、もう一度、俺のことを……?

そう思った坂田和也は、躊躇なく手を伸ばして彼女の腕を掴み、ぐいっと引き寄せた。

小林絵里が眉をひそめる。「ちょっと、何するの?」

切れ長で精悍な目が彼女を捉え、視線がゆっくりと落ちていく。次の瞬間、身体を傾けて唇を重ねようとした。

「……はあ? 頭おかしいんじゃないの!」

小林絵里は反射的に突き放し、...

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