第273章

松本幸雄は小林絵里を翡翠居まで送り届けた。病院を出た途端、庄司一火はさっと姿を消す。おそらく、また物陰に回って彼女を守っているのだろう。

それに対して、小林絵里の感情はほとんど揺れなかった。

翡翠居に着くと、松本幸雄はスイートのドア前まで見届けてから引き返した。去り際にひと言だけ残す。

「小林嬢、ホテルのほうに食事を用意させて、部屋へ運ばせました。あとで、寝ないで待っててください」

「はい、ありがとうございます」

小林絵里は小さくうなずく。

松本幸雄は穏やかに笑った。

「小林嬢、そんなにかしこまらなくて大丈夫です。必要なことがあれば、何でも言ってください」

「……はい」

小...

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