第294章

夏目夕子が我に返ったときには、坂田和也はもう背を向けて歩き去っていた。

門の前にひとり取り残され、全身の血がすうっと引いていく。

……

プレジデンシャルスイート。

小林絵里の荷物はすでに運び込まれていた。

並んだトランクを見つめ、彼女はきゅっと唇を結ぶ。

背後で気配がして、坂田和也が入ってくる。絵里がスーツケースから目を離さないのを見て、淡々と言った。

「お前が泊まってたホテルは危ない。これからはここにいろ」

小林絵里は振り向かずに言う。

「……わたしを尾けてたの?」

言い終えてから、はっとする。庄司一火がずっと陰で彼女を守っていたのだ。自分の行動は、とうに庄司から坂田へ...

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