第296章

小林絵里はその言葉を聞くなり、ぱっと目を見開いた。

「わ……わたしが誘惑……なに言ってるんですか?」

そんなはず、あるわけがない。

坂田和也の視線が、面白がるみたいに彼女の胸元へ落ちた。

小林絵里はつられて俯き、薄いネグリジェの下でぷくりと浮いた二つの点を見つけた瞬間、顔がかあっと熱くなる。

「――っ」

彼女は慌てて胸元を両手で押さえ、そのまま立ち上がって部屋を出た。

天……!

羽織りもせずに出てきてしまったのだ。

こんな格好で、ずっと彼の前をうろついていたのだから、見られて当たり前――そう思った途端、恥ずかしさが一気に込み上げる。

一番近いことだって、もうしているのに。...

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