第299章

小林絵里が今にも眠りに落ちそうになった、そのとき——スマホの着信音が鳴り出した。重いまぶたを持ち上げて画面を確認すると、表示されていたのは坂田和也の名前。

(……ん?)

こんな時間に、いったい何の用だろう。

訝しみながら通話を取る。

「もしもし?」

受話口の向こうから、冷えきった声が落ちてくる。

「開けろ」

小林絵里は一瞬、息をのむ。

「……帰ってきたの?」

「帰らねえでどこ行く」

さらに温度の下がった言い方だった。

小林絵里はくすりと笑って言う。

「もう戻ってこないのかと思ってた」

そう口にしながら部屋を出て玄関へ向かい、扉を開ける。振り返って、また寝ようとした—...

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