第302章

江口俐央はしゃくり上げながら訴えた。「和也お兄ちゃん、もうやめて……? わたし、海外に行く。これから先、二度とあなたを煩わせないから……」

坂田和也は冷たく言い放つ。「俺がやれって言ったこと、やったのか?」

江口俐央の声が、突然きんと尖った。「あんなクズに謝るなんて、絶対にしない!」

そう言い捨てると、彼女はぶつりと通話を切った。

坂田和也の顔色が、みるみる沈む。今にも水が滴り落ちそうなほどに。

車内の空気まで、いっそう重くなった。

隣に座る小林絵里は、スピーカーではなかったのに、電話の内容が耳に入っていた。彼女はそっと視線を落とし、表情を変えない。

――家族がいるって、それだ...

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