第306章

「古川社長、お水です」

 松本桜はコップを差し出した。けれど視線は、頑なに彼を避けている。

 古川修一はそれを受け取り、淡々とひと口含んでから言った。

「お前、今すげぇ俺を殺したいだろ?」

 松本桜は笑っているのに目が笑っていない、そんな薄い笑みを浮かべる。

「冗談がお上手ですね、社長。殺人は犯罪です」

 古川修一がくっと喉を鳴らすように笑った。

「じゃあ、犯罪じゃなけりゃ殺してたってことか?」

 松本桜は、にこりと微笑んだまま彼を見る。

 古川修一は理由もなく背筋がぞくりとした。

 立ち上がると、そのまま林の奥へ歩き出す。二歩ほど進んで、松本桜がまだ動かないのに気づき、...

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