第309章

だが、まだ二人は離婚していない。そう思うと、絵里は結局その電話に出た。

――もしかして、離婚の話かもしれない。

以前、彼のほうから切り出してきたこともある。

「もしもし?」

受話口から届いたのは、坂田和也の低く艶のある声だった。

「今どこだ。迎えを行かせる。祖母がお前に会いたがってる」

絵里の胸に、すうっと落胆が広がる。……離婚の話じゃない。

「今の私たちの関係で、おばあさまに会うのはふさわしくありません。適当な理由をつけて、お断りしてください」

坂田家の祖母は、絵里のことを気に入ってくれていた。優しくもしてくれた。

けれど――あの人は、坂田和也の祖母だ。今の自分に、どんな...

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