第311章

坂田南。

坂田家の次男。

――だが、あの年の誘拐事件で、思いがけず命を落としたはずの男だった。

坂田和也は視線を落としたまま、整った顔に感情の揺れを一切浮かべない。淡々と書類を机の上に置き、

「父さん、これはどういうことだ」

そう問う。

坂田正義は眼鏡を外し、低く言った。

「手紙の一文だ。誰かが俺に宅配で送ってきた。和也……南は、生きている可能性がある」

しかし和也は即座に返す。

「南兄さんは、俺の目の前で死んだ。見間違えるはずがない。筆跡なんて真似できるだろ。父さん、騙されるな」

正義は眉間を指で押さえ、ため息まじりに言う。

「だが当時のおまえはまだ幼かった。本当に、...

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