第317章

夏目夕子の顔に、ぱっと喜色が浮かんだ。

坂田和也はバスローブ姿のまま、まだ身体の水気を拭いてもいない。全身がびしょ濡れで、ひやりとした冷気をまとっていた。

「……何だって?」

落ちた瞳。まるで霜でも宿したみたいに暗く冷たい。

夏目夕子は背筋がぞくりとした。それでも意を決して言葉を絞り出す。

「こ……小林絵里に言われて来たの。絵里は今夜、帰らないって。和也、あの人……もうあなたのこと、愛してないのよ。離婚するためなら、こんなことまで平気でできる。……もう、あの人のこと考えないで。今、つらいんでしょう? わたしが……助けてあげる、ね?」

そう言いながら、彼女は思い切って坂田和也へ手を...

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