第323章

小林絵里は必死に身をよじった。

だが、ついさっき熱が下がったばかりで、しかも何も口にしていない。力なんて出るはずもない。

悔しさで頬まで赤く染まる。

「坂田和也、わたしはあなたの囚人じゃない! まだ離婚はしてないけど、あなたにわたしを縛る権利なんてない!」

権利がない?

坂田和也は鼻で笑った。

「今日、俺に権利があるかどうか――その目で思い知らせてやる」

有無を言わせず絵里を腕の中に抱え込み、そのまま外へと歩き出す。

「絵里……ゴホッ、ゴホ……」

高川寒彦がようやく息を整え、絵里が無理やり連れていかれるのを見て、よろめきながらも起き上がって追おうとした。

「寒彦さん!」

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