第332章

小林絵里は言った。「寒彦さん、ただのお菓子です。ふだん食欲がないとき、少しでも口にしてくださいね」

この程度、たいしたことじゃない。

高川寒彦は困ったように笑う。頬には青紫の痣がくっきり残り、妖艶なくらい整った顔立ちが、ひどく痛々しく見えた。

小林絵里はベッドの傍らに腰を下ろし、問いかける。「ケガ、重いんですか?」

高川寒彦は一度咳き込み、さらりと言う。「大したことはない。骨が何本か折れただけだ」

小林絵里は息を呑み、罪悪感が胸を締めつけた。「ごめんなさい……」

「もういい。道端でお前が倒れてるのを見たら、誰だって放っておけないだろ。俺が勝手にやったことだ。だから気にするな。……...

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