第355章

彼女は諦めきれず、もう一度インターホンを押し続けた。

けれど、やはり誰も出てこない。

空はみるみる暗くなり、秋の気配が濃くなる。吹きつける風には、ひやりとした冷たさが混じっていた。

小林絵里は手を下ろし、やるせなく息を吐いて背を向ける。そのまま立ち去った。

向かった先はホテルだった。だが中へ入った途端、責任者が佐川のおっさんを追い出そうとしている場面に出くわした。

「お客様、当館は営業を停止して改装に入りますので、恐れ入りますがご退館ください」

佐川のおっさんが食い下がる。

「来たときは普通に営業してたじゃねえか。そんな急に、どうしてだ?」

支配人は苦い顔で頭を下げた。

「...

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