第357章

小林絵里は、手のひらにじっとり汗がにじんでいた。

——本当に、離婚するつもりなんだ。

けれど、目の前の彼の気だるげな態度を見ていると、どうにも現実味がない。

「坂田和也……本気なの?」

小林絵里は探るように問うた。

この件で、ふたりはこれまで何度もぶつかってきた。今さら突然そんなことを言われても、簡単には信じられない。

坂田和也は薄い唇の端を冷たく持ち上げたまま言う。

「当然だ」

煙草をひと吸いする。吐き出された煙が、整った横顔の表情をぼかした。

「ただし同じだ。坂田の奥様じゃないお前に、俺の前へ出る資格はない」

小林絵りの胸が、どん、と沈む。

今日ここへ来たのは、坂田...

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