第358章

薄暗い片隅で、艶めいた空気がとろりと流れていた。

ふたりの唇のあいだには、まだ酒の香りが残っている。

坂田和也がふいに立ち上がり、小林絵里の手を引いて個室を出た。

廊下に出た途端、庄司一火が門番みたいに突っ立っていて、縋るような目でこちらを見ている。

坂田和也は冷たく一瞥しただけで取り合わず、そのまま小林絵里を連れてジェトを後にした。

車に乗り込んだ瞬間、すべてが歯止めを失った。

坂田和也は彼女の頬を両手で包み、焦れたように、苛立ちを混ぜるみたいに口づけてくる。指先がボタンを押すと、中央のパーテーションがすぐに降り、前席からの視線を遮った。

後部座席の空間が、途端に狭く感じられ...

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