第376章

庄司玉輝は彼女が立ち去るのを見届け、そっと息をついた。

  ――あの人、よくも親分の奥さんを残業させようなんて思えたな。そんなことしたら、親分に殺される……!

  ……

  小林絵里が坂田邸へ戻ると、意外にも坂田和也がいた。ソファに腰を下ろし、整った鋭い顔立ちに、ぬるいほど淡く、けれど他人行儀な冷たさを貼りつけている。

  絵里は視線を落とし、表情ひとつ変えずに階段へ向かった。

  背後で、足音が追ってくる。

  寝室の扉を開けた瞬間、腰を男の腕が抱きすくめた。引き寄せられ、熱い息が唇に落ちる。

  絵里は瞳をきゅっと縮め、勢いよく突き放した。

「何するの!」

  和也の顔...

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