第383章

松本桜は怒りで顔色がひどく悪かった。

小林絵里は足元がおぼつかず、ふらりと揺れる。坂田和也の端正な横顔を見つめる。何度も見てきたはずなのに、いまはひどく遠い。見知らぬ人みたいに。

――なんのためなんだろう。

ふっと笑みが漏れた次の瞬間、絵里は周防伊月のほうへ歩み寄り、迷いなく腕を振り抜いた。

ぱん、と乾いた音。

その一発で店内の空気が凍りつき、ざわめきが消える。

絵里は顔だけ坂田へ向ける。

「いまのが、わたしの平手打ちです。先に絡んできて、すぐ告げ口して、都合よく話をひっくり返して……あなたにはお灸を据えただけ。彼のベッドに潜り込んだくらいで、わたしが手を出せないとでも思ったん...

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