第412章

その男は当初、小林絵里と坂田和也の関係がどこか曖昧なのだろう、と疑っていただけだった。

だが、夏目夕子の言葉を耳にした途端、男は小林絵里をさらに強く抱え込んだ。

「坂田和也……お前が俺を徹底的に潰すなら、俺はお前から嫁を奪ってやる! どうせ俺なんか何者でもない。ひとり道連れにしたって、損はねえんだよ!」

男の目は血走り、追い詰められているのが一目でわかった。

小林絵里は夏目夕子をちらりと見る。

――わざと、よね?

自分と坂田和也の関係を暴露して、この男に自分を傷つけさせる気だ。

首筋の傷が、じくじくと疼いた。

小林絵里は眉を寄せ、必死に言葉を整える。

「昨夜のことは、もう追...

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